Liar Jack Records

存在しないアーティストの存在しないディスクレビュー。頭の中で音を鳴らせ。

第4回「読書感想文」読書感想文

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Artist:読書感想文(JAPAN
Title
:読書感想文 (2012)

Songs
01 金閣寺
02 雪国
03 それから
04 舞姫
05 
06 暗夜行路
07 鉄人Q
08 夜明け前
09 浮雲
10 金色夜叉
11 山椒魚

文学とロックの間に生まれた子、劍持昭二。「読んで感じたことをそのまま曲にしているだけ、ただの読書感想文で小学生にもできる。」劍持自身の言葉である。本を読み、その感想を曲にする。読書感想文というバンドはひたすらその工程を繰り返す。

現在までに、「読書感想文」「読書感想文」「読書感想文」の3作品がリリースされている。センセーショナルな演奏に、淡々と吐き出される言葉の数々。その言葉にはメロディーやリズムといったものが存在しない。こんなものを音楽にできるのは世界で劍持昭二だけではないだろうか。彼の独特の声質と彼自身が持つカリスマ性が、それを可能にしているのは間違いない。

彼自身は感想文と表現しているが、それぞれの文学作品が劍持昭二というフィルターを通過し、全く新しい作品として生まれ変わっている。フロントマン劍持昭二は言うまでもないが、彼をバックで支える精鋭達の演奏にも注目したい。もともとスタジオミュージシャンとして活躍していたスペシャリスト達が、劍持昭二という神輿をがっちり支えている。

それぞれの作品の雰囲気や、情景を感じさせる音作り、様々な日常音をサンプリングした効果音の使用など、正直、どこから何の音が出ているのか、何の音を使用しているのかさっぱりわからない。それほどまでにトラックの作り込みが複雑極まりない。この、スペシャルな神輿の担ぎ手達によって、劍持昭二の表現はより一層輝きを放つのだろう。

音楽活動以外にも、現代美術家としても活躍する彼にとっては、ロックもアートの1つなのかもしれない。彼の発言、行動にこれからも目が離せない。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

 

第3回「Insane dance」Don Chris

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ArtistDon ChrisU.K
Title
Insane dance (1978)

Songs
01 Opposite
02 Name of the god
03 Before a party
04 Bitchi
05 Stupid one
06 Rank bottom
07 White destruction
08 Foreigner
09 Insane dance

1970年代に起きたロンドン・パンクムーブメントの立役者的バンド「The color weapon」のフロントマンDon Chris(Vo.)のソロアルバム。The color weapon時代の政治的メッセージの強い歌詞や攻撃的な演奏とは正反対な、自らの内面や精神世界を表現した非常に繊細でトリップした楽曲が多い。

当時のインタビューでChris自身がこのアルバムについて「パンクを履いたチキン」と語っており、ロンドン・パンクシーンのアイコンとなっていたChrisの戸惑いや葛藤がこのアルバムからはひしひしと伝わってくる。

03 Before a party」の冒頭「知らない奴らがまた俺の家に入り込む。銃とナイフを持って、俺に歌えと斬りつける。」という歌詞からは、当時の彼の精神状態がギリギリだったことが伺える。ファンが求める彼の姿と、本当の自分の姿のズレが徐々に彼を追い込んでいったのだろう。

インストナンバーの、02「Name of the god」06「 Rank bottom」では、ドラック漬けだった彼の精神世界が音となり響き渡る。そして、アルバム最後の曲、09「Insane dance」「終わらないダンス。終われないダンス。」と、繰り返し叫ぶ彼の声はパンクロックの一つの完成形ではないだろうか。

1960年代後半、ニューヨークのアンダーグラウンドから始まったパンクムーブメントは、ロンドンに飛び火し1978年このアルバムのリリースと、セックス・ピストルズの解散で徐々に終焉を迎える。パンクロックとは終わらないダンス。終われないダンスなのかもしれない。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第2回「The People」The People

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ArtistThe PeopleU.K
Title
The People (1969)

Songs
01 Captivating song
02 Head of illusion
03 Foot and eye
04 Morning
05 Blindness girl
06 Prayer of lake
07 Withdrawal symptoms
08 MorningⅡ
09 Night factory

1970年代、このバンドほど過小評価されていたバンドがあっただろうか。数々の伝説的バンドが誕生した1960~70年代のイギリスにて、当時RCM在学中だったCass Adele(Vo.Gt.)を中心に結成されたThe People

メンバー全員がRCMの出身であり、歪んだギターにパワーのあるドラム、アレンジに富んだベース、その中にクラシック音楽の要素がちりばめられた楽曲は当時の最先端であっただろう。しかし、奇しくも同時期にファーストアルバムをリリースしたLed Zeppelinにその人気は集中し、彼らは日の目を見るには至らなかった。当時アトランティックレコードだったLed Zeppelinに対して、弱小レコード会社だったことも彼らの過小評価の原因だったのかもしれない。

01「Captivating song」04「Morning」05「Blindness girl」のギターリフは1970年代のものとは思えないほどキャッチーで先鋭的である。まさに名リフと言って良い。08「MorningⅡ」におけるDon Randolph(Dr.)のドラムプレイは、ボンゾのドラムと良く似ており、独特のリズム感にパワーのあるプレイは圧巻である。また、中南米の民族楽器チャランゴや、ケーナを使用した09「Night factory」からは、彼らの音楽知識の幅広さや、演奏技術の高さを感じさせる。

ファーストアルバムリリースから2年後の1971年に精神疾患に犯されたフロントマンのCass Adele(Vo.Gt.)は、自宅のキッチンで自らの命を絶った。それと同時にバンドは解散、たった1枚のアルバムのみでバンドは終焉を迎えてしまう。当時、誰かがThe Peopleの音楽的才能を評価していたら、時代の寵児となっていたかもしれない。

 Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第1回「All of the Gangster」The Damage

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ArtistThe DamageUSA
Title
All of the Gangster (2010)

Songs
01 Sad Era
02 Crazy hunter
03 Rice and wheat
04 God father
05 Bomb
06 In the fence
07 The Gangster
08 Song in the water
09 Strange dog
10 Lemon squeezing
11 The king
12 Arrest

2000年に彗星の如く現れたアメリカアリゾナ州出身の3人組バンドThe Damage。ファーストアルバム「The Mistake」がアメリカでゴールドディスクを受賞し、新人アーティストとしては異例のスピードでスターダムを駆け上がった。しかし、2001年にメンバー間のトラブルにより活動停止。

その10年後、2010年に突如セカンドアルバム「All of the Gangster」を発表。フロントマンのElijah Benjamin(Vo.Gt.)が活動停止期間に1人で書きためた曲の中から厳選されたナンバーが収録されている。

The Mistake」の繊細で綿密に計算されたサウンドを捨て、シンプルで荒削りなサウンドが多いこのアルバムは全世界の音楽ファンにファーストアルバムリリースに続き2度目の衝撃を与えた。ほとんどの楽曲がアコギ、ウッドベース、ドラムのみで構成されており、比較的ミドルテンポな曲が多い。

活動再開を宣言するような01「Sad Era」、活動停止期間の10年間を歌った03「Rice and wheat」、どこかニールヤング彷彿させるようなメロディーの08「Song in the water」、11「The king」などオールドロック的な楽曲もあれば、すべての楽器にエフェクターを多用した02「Crazy hunter」、07「The Gangster」。ボーカルの多重録音を使った05「Bomb」など音楽的実験作も多く収録されている。

しかしアルバム全体は不思議とまとまった雰囲気を魅しており、聞き応え十分な12曲だ。2013年の武道館でのライブ以降1度も来日しておらず、次の来日が待ち遠しいバンドである。

 Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。