Liar Jack Records

存在しないアーティストの存在しないディスクレビュー。頭の中で音を鳴らせ。

第8回「To say good bye is to die a little」Albatross

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ArtistAlbatrossU.S.A
Title
To say good bye is to die a little (2001)

Songs
01 Mass of lies
02 Dadaism pop
03 Where is the corn
04 Snow of sorrow
05 To say good bye is to die a little
06 Not painful
07 XL
08 Love of afterimage
09 Freezer
10 Girl guitar
11 period

1998年、弱冠15歳で、名門レコード会社ファラオ・サイド・レコードと契約を交わした若き歌姫Janis Alba。伝説の歌姫Janis Joplinの再来とされ、全世界で注目を集めた。しゃがれたハスキーボイスに、ソウルフルで圧倒的な歌唱力を兼ね備えた彼女の歌声は、多くのロックファンを魅了した。

2001年、そんな彼女をヴォーカリストに結成されたAlbatross。今までのオールドロックよりなアプローチはそのままに、新たな領域に踏み出した1枚が「To say good bye is to die a little」(邦:さよならをいうのは、少し死ぬことだ。)である。それまでのJanis Albaの楽曲は主にブルースや、初期のロックを基調とした曲が多く、歌い方もJanis Joplinと瓜二つであった。しかし、Albatrossでの彼女は、モダンであり、セクシャルで、声色もバラエティーに富んでおり、新たな一面を見せている。

洗練された彼女の歌声は、今までのJanis Joplinと比較されていた頃とは違い、唯一無二である。バックバンドの演奏も、固定観念にとらわれず、自由な発想で作り込まれており、彼女の歌声を引き立てるのに一役買っている。

今では、音楽業界に止まらず、映画、TV、ファッション業界からも引っ張りだこのスーパースターに成長した彼女だが、彼女が新たな領域に挑んだ初めての作品がこの、「To say good bye is to die a little」では無いだろうか。

そして、もしもJanis Joplinが27歳という若さでこの世を去らず、その後もシンガーとして活躍していれば、こんな歌も歌っていたのではないかと、妄想してしまう1枚でもある。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第7回「A級戦犯」戦犯

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Artist:戦犯(JAPAN
Title
A級戦犯 (1971)

Songs
01 斬首
02 ぶっころせ!!
03 特攻六九
04 真っ赤な兵士に捧げる詩
05 どろ水
06 鉄砲玉
07 教育~A級戦犯~
08 みぎむけみぎ
09 さよなら革命

ベトナム戦争反対を火種に、日本でも盛んになっていった学生運動。若者達が本気で世界を変えられると信じていた時代。1960年代後半から、1970年代初頭、後にゲバルト時代と呼ばれる赤い季節。その真っ只中に登場し、今も伝説となっているバンドは数多くいる。戦犯もそんな伝説的なバンドの一つではないだろうか。

1969年、マッシュ(木村寿一)、アニ(多田真弘)により結成された戦犯。過激なメッセージや、激しく暴力的なライブパフォーマンスは当時多くの若者から絶大な支持を得た。火炎瓶を客席に投げ入れたり、ゲバ棒で会場を破壊するなど、ライブではケガ人が続出し、数多くのコンサート会場やライブハウスを出禁になった。また、ゲリラ的に街中でライブを開催し、街中でパニックを起こし3度逮捕されるなど、危険なバンドとして世間からも注目を集めた。

そんな戦犯のファーストアルバムである「A級戦犯」。もともと1970年に発売される予定だったが、曲名や歌詞の過激な内容が問題となり、発売中止となってしまう。曲名や歌詞を一部改変し発売するも、発売後すぐに発売禁止処分となり、出回っていたものも回収になり大きな問題を残した。

しかし、1971年、自主制作で限定700万枚だけ発売され、あっという間に完売。ファンの間では破格の高値で取引されるようになる。そんな問題だらけのこの作品がCDとして発売されたのは、それから20年以上も経った2003年のことだった。04「真っ赤な兵士に捧げる詩」や、08「みぎむけみぎ」、09「さよなら革命」は政治集会などのコンサートでも積極的に演奏され、今では当時の学生運動を語る重要な資料として扱われている。

いつの時代も、ロックンロールは若者と共にある。このレコードからは、当時の若者たちの異様なまでの熱気と温度、そして枯れ果てるまで叫び続けた声が鮮明に記録されている。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第6回「Action」Neil Morgan

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ArtistNeil MorganU.S.A
Title
Action (1966)

Songs
01 I go around
02 Rains market
03 Toy box
04 Sung stick
05 Swing1960
06 Action

1930年代にジャズドラマーとして頭角をあらわし、1940年代、1950年代のモダンジャズ黄金期を支えたドラマーNeil Morgan。そんな彼が、1966年、52歳の年にリリースしたソロアルバム「Action」。数々のビックバンドでスタードラマーとして活躍したNeil Morganの円熟したドラムサウンドを堪能できる1枚である。

迫力のあるスウィングスタイルのドラミングが特徴のドラマーで知られるNeil Morganだが、力強い4つ打ちビートを基本に、歪みの強いロック要素を取り入れた03「Toy box」や、スネアドラムにエフェクトをかけ、電子音楽的要素を取り入れた04「Sung stick」など、当時の新しいリズムやサウンドを積極的に取り入れた構成になっている。

ビートルズストーンズなどロックンロール一色に染まり出した当時の音楽シーンに彼はとても好意的であったのだろう。05「Swing1960」には、録音現場にたまたま居合わせたビートルズのドラマー、リンゴスターがコーラスとして参加しているの。

そして最後の楽曲06「Action」での12分にも及ぶ彼のドラムソロは圧巻である。大胆で迫力のある音の中に刻み込まれる、繊細で円熟した彼のドラムサウンドは、彼の人生そのものである。

現代の音楽シーに、音のみで人生を表現出来るミュージシャンがどれほどいるだろうか。彼はそれを自然とやってのける。このアルバムは彼の人生そのものであり、自伝とも言えるだろう。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第5回「Amazing」Red theater

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ArtistRed theaterU.S.A
Title
Amazing (1985)

Songs
01 Towards tomorrow
02 Girl secret of town
03 Now if you change
04 She groupie
05 Beginning of the wheel
06 Train of Tears
07 Runaway Train
08 Angel
09 Fireworks and beer
10 Magic Magic word

1980年代中頃、アメリカ西海岸では、長髪に派手なメイクの美男子たちがまるでアイドルの様にもてはやされた。そう、L.Aメタル全盛期である。82年にモトリークルーがデビューし、その後すぐにラット、シンデレラ、ポイズン、ドッケンなど、あげればきりがないほど数多くのメタルバンドが登場した。もちろんRed theaterもその一員だ。どのバンドも長髪のソバージュ、露出の多い派手なタンクトップや、レザーパンツ。そして女性顔負けのメイクでビッグステージを駆け回る。彼らの派手なメイクや衣装から、ヘアー・メタルなどとも呼ばた。

当時開局したばかりのMTVでも次々と彼らのPVが流れ、L.Aメタルの波は瞬く間に大きくなった。当時は日本もバブル景気真っ直中。町中がネオンサインと高級外車で溢れ、今では考えられない様な光景が日常として機能していた時代。しかし、そんな日常は長く続くはずも無く、バブルがはじけ、L.Aメタルの波も90年代に入り、衰退していき、NIRVANAの登場でL.Aメタルは輝きを完全に失っていった。

Red theaterも例外ではなく、時代の新しい波に乗ることができず、1991年に解散。2011年に一度再結成されるが、それも長くは続かなかった。

L.Aメタルや、ヘアー・メタルバンドの楽曲は、メタルというよりはポップな作りで、万人受しやすいメロディーが主流だったが、Red theaterはその中でも比較的、ロック志向の強い楽曲が多い。60年代後期から、70年代のロック的要素も強く、01「Towards tomorrow」のようないわゆるL.Aメタルっぽい楽曲以外にも、06「Train of Tears」のようなオールドロックファンも唸るような楽曲も多い。派手な見た目や会場にばかり目が行きがちだが、色眼鏡を外してみるとなかなか名曲も多いバンドである。09「Fireworks and beer」は2000年代を代表するバンドScrewdriversにカヴァーされたことでも有名である。

また、楽曲以外にも、いかにもなジャケットも当時ならではだろう。ちなみにジャケットの猫は、3段変形ギターで有名なギタリストChrys land Wildの飼い猫であるという噂が広まったが、事実は不明である。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第4回「読書感想文」読書感想文

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Artist:読書感想文(JAPAN
Title
:読書感想文 (2012)

Songs
01 金閣寺
02 雪国
03 それから
04 舞姫
05 
06 暗夜行路
07 鉄人Q
08 夜明け前
09 浮雲
10 金色夜叉
11 山椒魚

文学とロックの間に生まれた子、劍持昭二。「読んで感じたことをそのまま曲にしているだけ、ただの読書感想文で小学生にもできる。」劍持自身の言葉である。本を読み、その感想を曲にする。読書感想文というバンドはひたすらその工程を繰り返す。

現在までに、「読書感想文」「読書感想文」「読書感想文」の3作品がリリースされている。センセーショナルな演奏に、淡々と吐き出される言葉の数々。その言葉にはメロディーやリズムといったものが存在しない。こんなものを音楽にできるのは世界で劍持昭二だけではないだろうか。彼の独特の声質と彼自身が持つカリスマ性が、それを可能にしているのは間違いない。

彼自身は感想文と表現しているが、それぞれの文学作品が劍持昭二というフィルターを通過し、全く新しい作品として生まれ変わっている。フロントマン劍持昭二は言うまでもないが、彼をバックで支える精鋭達の演奏にも注目したい。もともとスタジオミュージシャンとして活躍していたスペシャリスト達が、劍持昭二という神輿をがっちり支えている。

それぞれの作品の雰囲気や、情景を感じさせる音作り、様々な日常音をサンプリングした効果音の使用など、正直、どこから何の音が出ているのか、何の音を使用しているのかさっぱりわからない。それほどまでにトラックの作り込みが複雑極まりない。この、スペシャルな神輿の担ぎ手達によって、劍持昭二の表現はより一層輝きを放つのだろう。

音楽活動以外にも、現代美術家としても活躍する彼にとっては、ロックもアートの1つなのかもしれない。彼の発言、行動にこれからも目が離せない。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

 

第3回「Insane dance」Don Chris

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ArtistDon ChrisU.K
Title
Insane dance (1978)

Songs
01 Opposite
02 Name of the god
03 Before a party
04 Bitchi
05 Stupid one
06 Rank bottom
07 White destruction
08 Foreigner
09 Insane dance

1970年代に起きたロンドン・パンクムーブメントの立役者的バンド「The color weapon」のフロントマンDon Chris(Vo.)のソロアルバム。The color weapon時代の政治的メッセージの強い歌詞や攻撃的な演奏とは正反対な、自らの内面や精神世界を表現した非常に繊細でトリップした楽曲が多い。

当時のインタビューでChris自身がこのアルバムについて「パンクを履いたチキン」と語っており、ロンドン・パンクシーンのアイコンとなっていたChrisの戸惑いや葛藤がこのアルバムからはひしひしと伝わってくる。

03 Before a party」の冒頭「知らない奴らがまた俺の家に入り込む。銃とナイフを持って、俺に歌えと斬りつける。」という歌詞からは、当時の彼の精神状態がギリギリだったことが伺える。ファンが求める彼の姿と、本当の自分の姿のズレが徐々に彼を追い込んでいったのだろう。

インストナンバーの、02「Name of the god」06「 Rank bottom」では、ドラック漬けだった彼の精神世界が音となり響き渡る。そして、アルバム最後の曲、09「Insane dance」「終わらないダンス。終われないダンス。」と、繰り返し叫ぶ彼の声はパンクロックの一つの完成形ではないだろうか。

1960年代後半、ニューヨークのアンダーグラウンドから始まったパンクムーブメントは、ロンドンに飛び火し1978年このアルバムのリリースと、セックス・ピストルズの解散で徐々に終焉を迎える。パンクロックとは終わらないダンス。終われないダンスなのかもしれない。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第2回「The People」The People

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ArtistThe PeopleU.K
Title
The People (1969)

Songs
01 Captivating song
02 Head of illusion
03 Foot and eye
04 Morning
05 Blindness girl
06 Prayer of lake
07 Withdrawal symptoms
08 MorningⅡ
09 Night factory

1970年代、このバンドほど過小評価されていたバンドがあっただろうか。数々の伝説的バンドが誕生した1960~70年代のイギリスにて、当時RCM在学中だったCass Adele(Vo.Gt.)を中心に結成されたThe People

メンバー全員がRCMの出身であり、歪んだギターにパワーのあるドラム、アレンジに富んだベース、その中にクラシック音楽の要素がちりばめられた楽曲は当時の最先端であっただろう。しかし、奇しくも同時期にファーストアルバムをリリースしたLed Zeppelinにその人気は集中し、彼らは日の目を見るには至らなかった。当時アトランティックレコードだったLed Zeppelinに対して、弱小レコード会社だったことも彼らの過小評価の原因だったのかもしれない。

01「Captivating song」04「Morning」05「Blindness girl」のギターリフは1970年代のものとは思えないほどキャッチーで先鋭的である。まさに名リフと言って良い。08「MorningⅡ」におけるDon Randolph(Dr.)のドラムプレイは、ボンゾのドラムと良く似ており、独特のリズム感にパワーのあるプレイは圧巻である。また、中南米の民族楽器チャランゴや、ケーナを使用した09「Night factory」からは、彼らの音楽知識の幅広さや、演奏技術の高さを感じさせる。

ファーストアルバムリリースから2年後の1971年に精神疾患に犯されたフロントマンのCass Adele(Vo.Gt.)は、自宅のキッチンで自らの命を絶った。それと同時にバンドは解散、たった1枚のアルバムのみでバンドは終焉を迎えてしまう。当時、誰かがThe Peopleの音楽的才能を評価していたら、時代の寵児となっていたかもしれない。

 Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。