第19回「Farewell」The Stock
Artist:The Stock(JAPAN)
Title:Farewell (1993)
Songs
01 Testimony
02 影
03 Unicorn Rock
04 サニー
05 留守番電話
06 Red zone
07 何かが足りない
08 パンケーキ
09 HEBEREKE
10 終焉のギター
1990年代の日本のライブハウスでは、Hi-STANDARD、HAWAIIAN6、SPREADなどのバンドを先頭に、メロコア旋風が巻き起こっていた。70年代のパンクロックというよりは、80年代のハードコアパンクからの影響が強く、明るくメロディックな楽曲、ストリートなファッション性は多くの若者に受け入れられ、数多くのバンドが誕生した。The Stockもそんなバンドの1つである。
1993年に発売されたファーストアルバム「Farewell」。Farewellとは日本語で、「さらば」という意味である。1枚目のアルバムでいきなりこのタイトルなのには理由があり、結成当時からのボーカルだったMAKITO(Vo.)がレコーディング期間中にバイク事故で亡くなくなった為である。バンドは、CD発売を中止するか迷ったが、録音が終わっていなかった楽曲06「Red zone」09「HEBEREKE」に関しては、MAKITO(Vo.)の実の弟であるHIRO(ba.)が担当し、10「終焉のギター」はメンバーの意向によりボーカル無しのインストナンバーとなり、発売された。楽曲はインストだが、歌詞カードにはMAKITO(Vo.)作詞の歌詞が掲載されている。
ちなみに当初のアルバムタイトルは「Welcome」(ようこそ)であった。CD発売後、全楽曲のボーカルをHIRO(ba.)が担当し全国ツアーを周った。毎回、センターにはMAKITO(Vo.)のマイクが立てられ、ライブの最後には10「終焉のギター」がインストで演奏され、バックスクリーンに歌詞が映し出される演出が行われた。そして、このツアーを最後にバンドは解散となった。
MAKITO(Vo.)の事故現場には今でも多くのファンから花やお供え物があり、その場所で「終焉のギター」を聞くと、MAKITOの歌が聞こえるなどの都市伝説も生まれた。「終焉のギター」にはこんな歌詞がある。「世界は終焉を迎えようとしている。君は誰もいないライブハウスでギターを鳴らす。世界は終焉を迎えようとしている。君は最後の音を鳴らす。誰も知らない最後の音を。」「君」はMAKITO(Vo.)自身だったのかもしれない。そして、最後の音を知っているのは世界中で彼1人。今までも、この先も彼1人だけである。
Design&Text: BustaSkill
※これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。