Liar Jack Records

存在しないアーティストの存在しないディスクレビュー。頭の中で音を鳴らせ。

第16回「シティポップオペラ」キャロルライダー

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Artist:キャロルライダー(JAPAN)

Title:シティポップオペラ (1972)
Songs

01 キャロルライダーのシティポップオペラ

02 家に帰ろう

03 ガラス越しの恋はいつも明るい

04 始まりの街

05 赤い国道

06 群青賛歌

07 何もない時代

08 ガラクタになったギターケース

09 電気の村

10 傘を差しても

1960年代後半~70年代の日本にはフォークの風が吹いていた。数多くの若者たちがギターを手にし、日本の音楽シーンは飛躍的に進化していく。そんな、セピア色した空気の中で、数多くのバンドが生まれ、消えていった。キャロルライダーの曲を聴くと、セピア色の記憶がカラーに変わる。当時の時代の空気を感じさせる名曲の数々は、何もかもがデジタル化された現代になっても色あせることなく鳴り響く。

1970年「サンマル喫茶」のヒット共にデビューしたキャロルライダー。同年に1stアルバム「ああ、これが青春か。」をリリース。当時、橋本憲武(Vo.Gt.)の「和製ボブディラン」と例えられた特徴的な声色は賛否両論だった。人と違った特異な声質と、ディランのような気だるい歌い方、それでいて伸びある声は、彼が生まれながらに持っていた、才能であると言えるだろう。

そして、1972年「シティポップオペラ」がリリースされる頃、橋本憲武はギターをアコギから、エレキに持ち替え、フォークからロックに傾倒していく。独特の声は歪んだギターの音と見事に調和し、歌い方も徐々にエモーショナルになっていく。キャロルライダーは、はっぴいえんどや、RCサクセションなどと共に日本のロックシーンを牽引し、日本語でロックを歌った第一世代と言っても良いのではないだろうか。

このアルバムは、日本語でロックが出来るということを証明し、日本の音楽シーンに大きな転機をもたらした。これ以降、多くのバンドが日本語詞でロックを演奏するようになり、次第にそれは市民権を得て現代へと続いている。

このアルバム「シティポップオペラ」と、それを生み出したキャロルライダーの功績は計り知れない。それを証明するように2017年、「何もかもがある」時代になっても、彼らの「何もない時代」は人々の耳に届き続けている。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。