Liar Jack Records

存在しないアーティストの存在しないディスクレビュー。頭の中で音を鳴らせ。

第3回「Insane dance」Don Chris

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ArtistDon ChrisU.K
Title
Insane dance (1978)

Songs
01 Opposite
02 Name of the god
03 Before a party
04 Bitchi
05 Stupid one
06 Rank bottom
07 White destruction
08 Foreigner
09 Insane dance

1970年代に起きたロンドン・パンクムーブメントの立役者的バンド「The color weapon」のフロントマンDon Chris(Vo.)のソロアルバム。The color weapon時代の政治的メッセージの強い歌詞や攻撃的な演奏とは正反対な、自らの内面や精神世界を表現した非常に繊細でトリップした楽曲が多い。

当時のインタビューでChris自身がこのアルバムについて「パンクを履いたチキン」と語っており、ロンドン・パンクシーンのアイコンとなっていたChrisの戸惑いや葛藤がこのアルバムからはひしひしと伝わってくる。

03 Before a party」の冒頭「知らない奴らがまた俺の家に入り込む。銃とナイフを持って、俺に歌えと斬りつける。」という歌詞からは、当時の彼の精神状態がギリギリだったことが伺える。ファンが求める彼の姿と、本当の自分の姿のズレが徐々に彼を追い込んでいったのだろう。

インストナンバーの、02「Name of the god」06「 Rank bottom」では、ドラック漬けだった彼の精神世界が音となり響き渡る。そして、アルバム最後の曲、09「Insane dance」「終わらないダンス。終われないダンス。」と、繰り返し叫ぶ彼の声はパンクロックの一つの完成形ではないだろうか。

1960年代後半、ニューヨークのアンダーグラウンドから始まったパンクムーブメントは、ロンドンに飛び火し1978年このアルバムのリリースと、セックス・ピストルズの解散で徐々に終焉を迎える。パンクロックとは終わらないダンス。終われないダンスなのかもしれない。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。