Liar Jack Records

存在しないアーティストの存在しないディスクレビュー。頭の中で音を鳴らせ。

第15回「Psychedelic Cakes」N-FUNKY

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Artist:N-FUNKY(U.S.A)
Title:Psychedelic Cakes (2011)
Songs
01 Base head
02 Buzz beat
03 Psychedelic Cakes
04 N.Y candy
05 Punk Rap
06 MC Acoustic
07 Dancing All Night
08 Street of proof
09 Underground Vibrations
10 You're a madman
11 Clown
12 keep it real

1999年にエミネムがメジャーデビューし、Hip-Hop界のみならず、音楽業界のスパースターに登りつめてから10年後、多様化したHip-Hop文化を象徴する形で世に現れたN-FUNKY。幼少期から家にあったクラシックギターを奏で、中学生の頃には自身で作詞、作曲した楽曲テープを、Dr.Dreの家に毎週送りつけていたというツワモノ。クラシックギターの腕前は誰もが認める超一流であり、そんな超絶ギターテクをさらっとこなしながら、ラップまでかましてしまう彼の才能は異常とまでも言える。

2010年に5曲入りミニアルバム「Cakes」をリリースしたと同時に各地で火がつき、フルアルバムが期待されてから1年後、満を持して発表された12曲入りのフルアルバム「Psychedelic Cakes」。ほとんどの楽曲が、クラシックギターとラップのみという極限にシンプルな構成であり、メロウなギターサウンドの上に、まるでジェームス・ブラウンの様なパワフルかつ、ソウルフルな声で紡ぎ出される言葉の数々は、Hip-Hopリスナーだけでなく、すべての音楽リスナーを虜にした。

楽器や機材のデジタル化が日々進む中、ライブでもほとんどの曲を弾き語りスタイルで披露する。人類が遥か昔に編み出した、音を楽しむという行為と非常に近い原始的な感覚で作り出される彼の音楽からは、音楽の原点を私たちに感じさせてくれる。また最近では、Lady GaGaや、The Rolling Stonesをはじめ、多くの有名ミュージシャンとコラボレーションしており、世代やジャンルを超えて愛されるアーティストに成長している。そんな無邪気な彼から今後も目が離せない。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第14回「Seven of tepid poison」The Five Five Fives

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ArtistThe Five Five FivesU.S.A
Title
Seven of tepid poison (1994)

Songs
01 Happy day
02 Testimony
03 Dog fanfare
04 The end of the world
05 Space punk
06 Hangover girl
07 Whose
08 Explosion
09 Red

1990年代、OffspringGreen Dayと共に90年代パンクブームを引っ張ってきたバンドの1つThe Five Five Fivesピストルズやクラッシュの様な、怒り、衝動、焦燥などでは無く、キャッチーでポジティブな90年代パンクは、人気と共に多くの批判も集めた。その中心にいたThe Five Five Fivesが人気を掴むきっかけとなった1stアルバム「Seven of tepid poison」。

インディーズレーベルからリリースされたにも関わらず1000万枚を売り上げる大ヒットを記録し、彼らは一躍ロックの次世代を担う存在だともてはやされた。それまで流行っていたNirvanaの様な、どこか陰鬱でアンダーグラウンドグランジロックや、オルタナティブとは正反対なポップで明るいサウンド。怒りや衝動性の無い保守的にもとらえられる歌詞などは、当時こんな物はパンクじゃないとインディーシーンからの批判も多かった。

しかし、このアルバムは、ロックやパンクに限らず、音楽の向かうべき方向性を示した数少ないアルバムであったと思う。それまでのロックのシーン、いわゆるグランジオルタナが持っていた、陰鬱で内的なものをそのまま表現するのではなく、それをポジティブで明るく、楽しい方向へと変換し表現した。

01「Happy day」の冒頭、「みんなが楽しくて、俺も楽しい。他に何がいるんだい。」という歌詞は、当時のロックが失いかけていたLOVEPEACEでは無いだろうか。ロックが本来持っていたポジティブな部分をThe Five Five Fivesは継承していたのだ。カートコバーンは自ら命を絶った。良い悪いは別として、それもロックかもしれない。しかし、彼らは前を向いて生きることを選んだ。この歩みがあったからこそ、今もロックは時代と共に走り続けているのではないだろうか。

現在、ロックンロールがそのイズムを失わずかき鳴らされている事実、それこそが当時、彼らが向かった方向が正しかったことを証明する何よりの証拠ではないだろうか。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第13回「High tide blues」The Golden Roads

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ArtistThe Golden RoadsAustralia
Title
High tide blues(2004)

Songs
01 High tide blues
02 Crossroads of torrent
03 Dust box Rock
04 Vanish town
05 Dopeness click
06 Tightrope walking blues
07 Good thing
08 Mic check Road
09 Red season
10 Jimmy punk
11 Sympathy for the Devil Cover

1960~70年代のロックンロールを聞いて育った、オーストラリア出身のThe Golden Roadsの1stアルバム。彼らの1年先輩、同じくオーストラリア出身JETの前座をアマチュア時代からこなしていた彼らの楽曲は、変化球なし直球一本勝負だ。オーストラリアからはなぜこんなにもパワー溢れるバンドがたくさん生まれるのだろうか。1曲目から最終曲まで一気に駆け抜けるその潔さは、実にあっぱれである。

ザクザクしたギターリフ、どこかぶっきらぼうでしゃがれたボーカルはロックンロールの学校をしっかり卒業した証である。全体的にアップテンポな楽曲がほとんどだが、ビートルズを彷彿させる04「Vanish town」。ピンクフロイド的アプローチの、07「Good thing」。ロックバラードの王道進行やコーラスが心地よい、09「Red season」など、バラード楽曲も絶品である。

この手のバンドは良くも悪くも、オリジナリティーがないと評価されることが多いが、彼らからは、そんな事はどうでも良いという感じがひしひしと伝わってくる。「好きなものは好きなんだ。だからなんだ。」と言わんばかりの姿勢は非常に好感が持てるし、なにより聞いていて心地よい。ストーンズの名曲カバー11「Sympathy for the Devil (Cover)」の原曲に忠実なアレンジからは、彼らのそういった姿勢が良く表れている。

惜しくもデビューから2年で解散してしまったが、オセアニア発、AC/DCを母としたオージーロックの息子たちの熱い活躍をこれからも期待したい。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第12回「GLORIA」The Rainy Sundays

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ArtistThe Rainy SundaysIreland
Title
GLORIA(1999)

Songs
01 Benevolent children
02 Bible
03 Apocalypse Rock
04 Jesus
05 Crime and Punishment
06 Morning fog
07 Riding on the night train
08 Classic car
09 In front of the mother's grave
10 After his death 100 years

世界が来る21世紀を前に騒がしかった時代、20世紀最後の年にリリースされたアイルランド出身の5人組 The Rainy Sundays の1stアルバム。バンドメンバー全員がクリスチャンであり、それが曲名や歌詞に色濃く反映されている。

作詞作曲はフロントマンであるDevitt Murphy(Vo.)。ほとんどの曲が、Murphyが10代の頃から書きためた詩や曲であり、Murphy自身が、当時のインタビューで「聖書の言葉ほど美しいものは無い。」と断言しているだけあり、歌詞の中には聖書の言葉が多く使用されている。

01「Benevolent children」心地よいギターのアルペジオの中「In the beginning was the Word, and the Word was with God, and the Word was God(初めにことばがあった。ことばは神と共にあった。 ことばは神であった。)」と高い声で歌われる。この冒頭こそ、このアルバムを最も象徴するものであろう。02「Bible」のサビでは、激情的なバイオリンに合わせて、「This is my commandment, that you love one another as I have loved you(わたしのいましめは、これである。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。)」と繰り返す。ほとんどの楽曲が神や、生と死などについて歌われており、かなり好き嫌いが分かれるバンドではあるが、楽曲自体のクオリティーは非常に高い。

紅一点であるバイオリンのCara Kellyは町の聖歌隊や、オーケストラの団員としても活躍しており、その演奏技術は素晴らしい限りだ。このバイオリンの音が他のバンド楽器と合わさり、非常に聞き応えのある楽曲に仕上がっており、まさに、ロックの可能性を広げた一枚と言えるだろう。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第11回「電気は消して。」THE PANTYS

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ArtistTHE PANTYSJAPAN
Title
:電気は消して。 (2005)

Songs
01 奥にちょうだい
02 PANTYS音頭
03 ツッコミ待ちの奴の顔
04 地球外性命体
05 電気は消して。
06 ナンシーに憧れる少女は穴の中
07 カフェで流れるフランクザッパ
08 煙たいラブソング
09 可愛い依存症候群
10 殴ってもいいよ。てか、殴れよ。
11 21世紀バージン
12 元彼の歌

2000年代初頭からメンバーの地元、下北沢から火がつき、その過激な音楽性やパフォーマンスで注目を集めた伝説的ガールズバンドTHE PANTYS。ライブ中に暴れまわりほとんど演奏しないでステージを火の海にしたり、渋谷スクランブル交差点のど真ん中でゲリラライブを敢行し、メンバー全員が逮捕されるなど、数々の伝説を残してきた。

そんな彼女たちの最初で最後の音源作品。「電気は消して。」アルバムジャケットがあまりに過激だったため発売禁止となり、モザイク処理されたジャケットで再発売された。しかし、デモ音源で会場配布されていたジャケットにはモザイクがかかっておらず、マニアの間でプレミアとして高値で取引されている。

その過激なパフォーマンスからも分かるように、歌詞もとてもじゃないが発売できるような内容ではない。しかし、社会の批判的な声が増えれば増えるほど、彼女たちを支持する若者も増えていった。ストレートで無修正な彼女たちの音楽は、同世代の若者の心をがっつりと捉えて離さなかった。2005年に行われた全国ツアーでは、どの会場でも厳重な警備や警察官が配備されていたにもかかわらず、合計38人のけが人が出るなど、誰も彼女たちを止めることはできなかった。

そんな全国ツアーのファイナルが地元、下北沢で行われた翌日、ボーカルでバンドの顔でもある矢沢愛が、自宅のベランダから飛び降りこの世を去るという衝撃的な事件で、バンドは解散と同時に伝説となった。まるでスクリーンの中のロックスターのような人生を送った彼女たちのパワーは今も伝説として日本のロックシーンで語り継がれている。

Design&Text: BustaSkill

 

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第10回「The secret woman」Black cream

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ArtistBlack creamU.K
Title
The secret woman (1970)

Songs
01 Electric tongue
02 Girl secret of town
03 Morning light
04 The story of a man
05 Black beans White beans
06 Hot coffee blues
07 Happiness is the needle
08 Oasis
09 Girlfriend Company

40年以上長きにわたり、コンスタントに活動を続け、90年代以降のオルタネイティブ世代に再度支持されるなど、世代を超えた評価を獲得しているYoung Rush(Vo.Gt.)。このアルバムは、Black cream時代の彼の代表作と言えるだろう。セールス面ではセカンドアルバム「Youth of wall」の方が上だが、Black cream時代のYoung Rushを語るなら、やはりこのアルバムである。

アコースティクなカントリー、ロック、ブルース、ピアノの弾き語り、歪音のギターソロなど溢れ出る気持ちを思いっきり叩き付けるような多彩な曲と演奏は、固定概念にとらわれない、彼の柔軟さの現れだろう。時代が移り変わるにつれてやってくる希望や、葛藤、内省的なセンチメンタリズムや、政治的視点など、あの時代ならではの空気感や匂いを、このアルバムは強烈に発し続けている。

Young Rushソロ名義のアルバムや、RushYoung band時代の楽曲は、アコースティクな楽曲がほとんどだが、Black cream時代の彼の音は歪音がメインである。01「Electric tongue」は、まさにBlack cream時代の彼の音の象徴とも言える楽曲であろう。

Young Rushが当時、時代に吐いた叫びは、今もなを放電されること無く、大量の電気を帯びて現代に存在し続けている。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第9回「Retort」DOOSE

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ArtistDOOSEU.S.A
Title
Retort (1989)

Songs
01 Got Crazy
02 Lick
03 R.T.H
04 Trial and error
05 I quit immediately
06 Slang
07 The Star
08 Bullet mark
09 GDUA
10 Black sun
11 Three eyes

1970年代、ブロンクスの貧困街から始まったHIP HOP。数多くの伝説的先人によって発展していったそのサウンドは、やがてストリートから全世界へと広まっていく。DOOSEもそんなHIP HOPを語る上では欠かせない人物だろう。

Retort」は1988年に発売されたDOOSE1stレコードであり、後のHIP HOP文化に大きく影響を与えた1枚なのは間違いない。もともとBDPの取り巻き、ボディーガード的ポジションにいたDOOSEだが、スペクトラム・シティのDJ、ハンク・ショックリーに気に入られ、彼らのイベントなどにMCとして出演し、名を広めていく。1988年にデフジャムレコードと契約を交わし、1989年に「Retort」をリリースする。当時の流れであった、タフでパワフルなサウンドを軸に展開されるメッセージ性の強いリリックは、まさに時代を抉る力を持っていた。

グランドマスター・フラッシュの"The massege”を彷彿とさせる02Lick」を筆頭に、05I quit immediately」、07The Star」は、その強いメッセージ性と巧みな言葉選びが評価され、DOOSE3部作として後のHIP HOPにも大きな影響を与えることになった。90年代中頃の、東西抗争の中心人物であり、数々の悪行伝説を築き上げた2PACDOOSEからの影響が強く、自身のアルバムで10Black sun」をカバーしている。

1991年夏、スタジオから自宅に帰る途中だったDOOSEは、信号を待っている最中、隣に止まった車から何発もの銃弾を浴び、息を引き取った。当時、犯人は敵対していたギャング組織、熱狂的なファンの狂った行動など、多くの噂が立ったが、犯人が捕まること無く事件は迷宮入りした。

2001年、DOOSE殺害の謎をテーマにした映画「No Face」(邦:顔のない暗殺者)が公開されるなど、その影響は音楽だけにとどまらず、今もなお多くの支持を得ている事は言うまでもない。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。