Liar Jack Records

存在しないアーティストの存在しないディスクレビュー。頭の中で音を鳴らせ。

第11回「電気は消して。」THE PANTYS

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ArtistTHE PANTYSJAPAN
Title
:電気は消して。 (2005)

Songs
01 奥にちょうだい
02 PANTYS音頭
03 ツッコミ待ちの奴の顔
04 地球外性命体
05 電気は消して。
06 ナンシーに憧れる少女は穴の中
07 カフェで流れるフランクザッパ
08 煙たいラブソング
09 可愛い依存症候群
10 殴ってもいいよ。てか、殴れよ。
11 21世紀バージン
12 元彼の歌

2000年代初頭からメンバーの地元、下北沢から火がつき、その過激な音楽性やパフォーマンスで注目を集めた伝説的ガールズバンドTHE PANTYS。ライブ中に暴れまわりほとんど演奏しないでステージを火の海にしたり、渋谷スクランブル交差点のど真ん中でゲリラライブを敢行し、メンバー全員が逮捕されるなど、数々の伝説を残してきた。

そんな彼女たちの最初で最後の音源作品。「電気は消して。」アルバムジャケットがあまりに過激だったため発売禁止となり、モザイク処理されたジャケットで再発売された。しかし、デモ音源で会場配布されていたジャケットにはモザイクがかかっておらず、マニアの間でプレミアとして高値で取引されている。

その過激なパフォーマンスからも分かるように、歌詞もとてもじゃないが発売できるような内容ではない。しかし、社会の批判的な声が増えれば増えるほど、彼女たちを支持する若者も増えていった。ストレートで無修正な彼女たちの音楽は、同世代の若者の心をがっつりと捉えて離さなかった。2005年に行われた全国ツアーでは、どの会場でも厳重な警備や警察官が配備されていたにもかかわらず、合計38人のけが人が出るなど、誰も彼女たちを止めることはできなかった。

そんな全国ツアーのファイナルが地元、下北沢で行われた翌日、ボーカルでバンドの顔でもある矢沢愛が、自宅のベランダから飛び降りこの世を去るという衝撃的な事件で、バンドは解散と同時に伝説となった。まるでスクリーンの中のロックスターのような人生を送った彼女たちのパワーは今も伝説として日本のロックシーンで語り継がれている。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第10回「The secret woman」Black cream

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ArtistBlack creamU.K
Title
The secret woman (1970)

Songs
01 Electric tongue
02 Girl secret of town
03 Morning light
04 The story of a man
05 Black beans White beans
06 Hot coffee blues
07 Happiness is the needle
08 Oasis
09 Girlfriend Company

40年以上長きにわたり、コンスタントに活動を続け、90年代以降のオルタネイティブ世代に再度支持されるなど、世代を超えた評価を獲得しているYoung Rush(Vo.Gt.)。このアルバムは、Black cream時代の彼の代表作と言えるだろう。セールス面ではセカンドアルバム「Youth of wall」の方が上だが、Black cream時代のYoung Rushを語るなら、やはりこのアルバムである。

アコースティクなカントリー、ロック、ブルース、ピアノの弾き語り、歪音のギターソロなど溢れ出る気持ちを思いっきり叩き付けるような多彩な曲と演奏は、固定概念にとらわれない、彼の柔軟さの現れだろう。時代が移り変わるにつれてやってくる希望や、葛藤、内省的なセンチメンタリズムや、政治的視点など、あの時代ならではの空気感や匂いを、このアルバムは強烈に発し続けている。

Young Rushソロ名義のアルバムや、RushYoung band時代の楽曲は、アコースティクな楽曲がほとんどだが、Black cream時代の彼の音は歪音がメインである。01「Electric tongue」は、まさにBlack cream時代の彼の音の象徴とも言える楽曲であろう。

Young Rushが当時、時代に吐いた叫びは、今もなを放電されること無く、大量の電気を帯びて現代に存在し続けている。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第9回「Retort」DOOSE

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ArtistDOOSEU.S.A
Title
Retort (1989)

Songs
01 Got Crazy
02 Lick
03 R.T.H
04 Trial and error
05 I quit immediately
06 Slang
07 The Star
08 Bullet mark
09 GDUA
10 Black sun
11 Three eyes

1970年代、ブロンクスの貧困街から始まったHIP HOP。数多くの伝説的先人によって発展していったそのサウンドは、やがてストリートから全世界へと広まっていく。DOOSEもそんなHIP HOPを語る上では欠かせない人物だろう。

Retort」は1988年に発売されたDOOSE1stレコードであり、後のHIP HOP文化に大きく影響を与えた1枚なのは間違いない。もともとBDPの取り巻き、ボディーガード的ポジションにいたDOOSEだが、スペクトラム・シティのDJ、ハンク・ショックリーに気に入られ、彼らのイベントなどにMCとして出演し、名を広めていく。1988年にデフジャムレコードと契約を交わし、1989年に「Retort」をリリースする。当時の流れであった、タフでパワフルなサウンドを軸に展開されるメッセージ性の強いリリックは、まさに時代を抉る力を持っていた。

グランドマスター・フラッシュの"The massege”を彷彿とさせる02Lick」を筆頭に、05I quit immediately」、07The Star」は、その強いメッセージ性と巧みな言葉選びが評価され、DOOSE3部作として後のHIP HOPにも大きな影響を与えることになった。90年代中頃の、東西抗争の中心人物であり、数々の悪行伝説を築き上げた2PACDOOSEからの影響が強く、自身のアルバムで10Black sun」をカバーしている。

1991年夏、スタジオから自宅に帰る途中だったDOOSEは、信号を待っている最中、隣に止まった車から何発もの銃弾を浴び、息を引き取った。当時、犯人は敵対していたギャング組織、熱狂的なファンの狂った行動など、多くの噂が立ったが、犯人が捕まること無く事件は迷宮入りした。

2001年、DOOSE殺害の謎をテーマにした映画「No Face」(邦:顔のない暗殺者)が公開されるなど、その影響は音楽だけにとどまらず、今もなお多くの支持を得ている事は言うまでもない。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第8回「To say good bye is to die a little」Albatross

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ArtistAlbatrossU.S.A
Title
To say good bye is to die a little (2001)

Songs
01 Mass of lies
02 Dadaism pop
03 Where is the corn
04 Snow of sorrow
05 To say good bye is to die a little
06 Not painful
07 XL
08 Love of afterimage
09 Freezer
10 Girl guitar
11 period

1998年、弱冠15歳で、名門レコード会社ファラオ・サイド・レコードと契約を交わした若き歌姫Janis Alba。伝説の歌姫Janis Joplinの再来とされ、全世界で注目を集めた。しゃがれたハスキーボイスに、ソウルフルで圧倒的な歌唱力を兼ね備えた彼女の歌声は、多くのロックファンを魅了した。

2001年、そんな彼女をヴォーカリストに結成されたAlbatross。今までのオールドロックよりなアプローチはそのままに、新たな領域に踏み出した1枚が「To say good bye is to die a little」(邦:さよならをいうのは、少し死ぬことだ。)である。それまでのJanis Albaの楽曲は主にブルースや、初期のロックを基調とした曲が多く、歌い方もJanis Joplinと瓜二つであった。しかし、Albatrossでの彼女は、モダンであり、セクシャルで、声色もバラエティーに富んでおり、新たな一面を見せている。

洗練された彼女の歌声は、今までのJanis Joplinと比較されていた頃とは違い、唯一無二である。バックバンドの演奏も、固定観念にとらわれず、自由な発想で作り込まれており、彼女の歌声を引き立てるのに一役買っている。

今では、音楽業界に止まらず、映画、TV、ファッション業界からも引っ張りだこのスーパースターに成長した彼女だが、彼女が新たな領域に挑んだ初めての作品がこの、「To say good bye is to die a little」では無いだろうか。

そして、もしもJanis Joplinが27歳という若さでこの世を去らず、その後もシンガーとして活躍していれば、こんな歌も歌っていたのではないかと、妄想してしまう1枚でもある。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第7回「A級戦犯」戦犯

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Artist:戦犯(JAPAN
Title
A級戦犯 (1971)

Songs
01 斬首
02 ぶっころせ!!
03 特攻六九
04 真っ赤な兵士に捧げる詩
05 どろ水
06 鉄砲玉
07 教育~A級戦犯~
08 みぎむけみぎ
09 さよなら革命

ベトナム戦争反対を火種に、日本でも盛んになっていった学生運動。若者達が本気で世界を変えられると信じていた時代。1960年代後半から、1970年代初頭、後にゲバルト時代と呼ばれる赤い季節。その真っ只中に登場し、今も伝説となっているバンドは数多くいる。戦犯もそんな伝説的なバンドの一つではないだろうか。

1969年、マッシュ(木村寿一)、アニ(多田真弘)により結成された戦犯。過激なメッセージや、激しく暴力的なライブパフォーマンスは当時多くの若者から絶大な支持を得た。火炎瓶を客席に投げ入れたり、ゲバ棒で会場を破壊するなど、ライブではケガ人が続出し、数多くのコンサート会場やライブハウスを出禁になった。また、ゲリラ的に街中でライブを開催し、街中でパニックを起こし3度逮捕されるなど、危険なバンドとして世間からも注目を集めた。

そんな戦犯のファーストアルバムである「A級戦犯」。もともと1970年に発売される予定だったが、曲名や歌詞の過激な内容が問題となり、発売中止となってしまう。曲名や歌詞を一部改変し発売するも、発売後すぐに発売禁止処分となり、出回っていたものも回収になり大きな問題を残した。

しかし、1971年、自主制作で限定700万枚だけ発売され、あっという間に完売。ファンの間では破格の高値で取引されるようになる。そんな問題だらけのこの作品がCDとして発売されたのは、それから20年以上も経った2003年のことだった。04「真っ赤な兵士に捧げる詩」や、08「みぎむけみぎ」、09「さよなら革命」は政治集会などのコンサートでも積極的に演奏され、今では当時の学生運動を語る重要な資料として扱われている。

いつの時代も、ロックンロールは若者と共にある。このレコードからは、当時の若者たちの異様なまでの熱気と温度、そして枯れ果てるまで叫び続けた声が鮮明に記録されている。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第6回「Action」Neil Morgan

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ArtistNeil MorganU.S.A
Title
Action (1966)

Songs
01 I go around
02 Rains market
03 Toy box
04 Sung stick
05 Swing1960
06 Action

1930年代にジャズドラマーとして頭角をあらわし、1940年代、1950年代のモダンジャズ黄金期を支えたドラマーNeil Morgan。そんな彼が、1966年、52歳の年にリリースしたソロアルバム「Action」。数々のビックバンドでスタードラマーとして活躍したNeil Morganの円熟したドラムサウンドを堪能できる1枚である。

迫力のあるスウィングスタイルのドラミングが特徴のドラマーで知られるNeil Morganだが、力強い4つ打ちビートを基本に、歪みの強いロック要素を取り入れた03「Toy box」や、スネアドラムにエフェクトをかけ、電子音楽的要素を取り入れた04「Sung stick」など、当時の新しいリズムやサウンドを積極的に取り入れた構成になっている。

ビートルズストーンズなどロックンロール一色に染まり出した当時の音楽シーンに彼はとても好意的であったのだろう。05「Swing1960」には、録音現場にたまたま居合わせたビートルズのドラマー、リンゴスターがコーラスとして参加しているの。

そして最後の楽曲06「Action」での12分にも及ぶ彼のドラムソロは圧巻である。大胆で迫力のある音の中に刻み込まれる、繊細で円熟した彼のドラムサウンドは、彼の人生そのものである。

現代の音楽シーに、音のみで人生を表現出来るミュージシャンがどれほどいるだろうか。彼はそれを自然とやってのける。このアルバムは彼の人生そのものであり、自伝とも言えるだろう。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。

第5回「Amazing」Red theater

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ArtistRed theaterU.S.A
Title
Amazing (1985)

Songs
01 Towards tomorrow
02 Girl secret of town
03 Now if you change
04 She groupie
05 Beginning of the wheel
06 Train of Tears
07 Runaway Train
08 Angel
09 Fireworks and beer
10 Magic Magic word

1980年代中頃、アメリカ西海岸では、長髪に派手なメイクの美男子たちがまるでアイドルの様にもてはやされた。そう、L.Aメタル全盛期である。82年にモトリークルーがデビューし、その後すぐにラット、シンデレラ、ポイズン、ドッケンなど、あげればきりがないほど数多くのメタルバンドが登場した。もちろんRed theaterもその一員だ。どのバンドも長髪のソバージュ、露出の多い派手なタンクトップや、レザーパンツ。そして女性顔負けのメイクでビッグステージを駆け回る。彼らの派手なメイクや衣装から、ヘアー・メタルなどとも呼ばた。

当時開局したばかりのMTVでも次々と彼らのPVが流れ、L.Aメタルの波は瞬く間に大きくなった。当時は日本もバブル景気真っ直中。町中がネオンサインと高級外車で溢れ、今では考えられない様な光景が日常として機能していた時代。しかし、そんな日常は長く続くはずも無く、バブルがはじけ、L.Aメタルの波も90年代に入り、衰退していき、NIRVANAの登場でL.Aメタルは輝きを完全に失っていった。

Red theaterも例外ではなく、時代の新しい波に乗ることができず、1991年に解散。2011年に一度再結成されるが、それも長くは続かなかった。

L.Aメタルや、ヘアー・メタルバンドの楽曲は、メタルというよりはポップな作りで、万人受しやすいメロディーが主流だったが、Red theaterはその中でも比較的、ロック志向の強い楽曲が多い。60年代後期から、70年代のロック的要素も強く、01「Towards tomorrow」のようないわゆるL.Aメタルっぽい楽曲以外にも、06「Train of Tears」のようなオールドロックファンも唸るような楽曲も多い。派手な見た目や会場にばかり目が行きがちだが、色眼鏡を外してみるとなかなか名曲も多いバンドである。09「Fireworks and beer」は2000年代を代表するバンドScrewdriversにカヴァーされたことでも有名である。

また、楽曲以外にも、いかにもなジャケットも当時ならではだろう。ちなみにジャケットの猫は、3段変形ギターで有名なギタリストChrys land Wildの飼い猫であるという噂が広まったが、事実は不明である。

Design&Text: BustaSkill

 

これらのバンド、ジャケット、曲名などは全てフィクションであり、登場する人物、団体等、名称は実在のものとは関係ありません。脳内で音を鳴らしてお聞きください。